肝がん・肝腫瘍

治療法の紹介およびリンク先

 肝がんの治療法には大きく分けて外科的治療と内科的治療があります。以下の診療ガイドラインに基づいて治療法を選択しますが、それぞれに長所・短所があり、腫瘍の状態と肝機能から、治療法を選択します。

    肝癌診療ガイドライン 2021年版

    肝癌診療ガイドライン 2021年版

    外科的治療

      (1)肝切除術

       腫瘍を含む肝臓の一部を切除する治療法で、最も確実な治療法の一つです。
       腫瘍の大きさ、数、占拠部位、肝機能から肝切除可能かどうか判断します。
       低侵襲術式としてのロボット支援肝切除術も積極的に行っていますし、大事な血管に浸潤している症例は非常に大きな肝腫瘍の場合は開腹手術で切除し、安全第一の肝切除を行っています。また、extended realityを手術ナビゲーションに応用し、世界に先駆けた最新肝切除も提供可能です。

      (2)肝移植

       我が国では脳死ドナーの不足から、主に生体肝移植が行われています。
      これは、近親者から肝臓の約40-60%を提供していただき、患者さんに移植する治療法です。
       65歳以下の肝機能が悪い患者さん(Child-Pugh分類でグレードC)で、1) ミラノ基準「1個で5cm以下あるいは3cm以下3個以内」を満たす場合、あるいは、2) ミラノ基準外の5-5-500基準「腫瘍径5cm以内かつ腫瘍個数5個以内かつAFP 500 ng/ml以下」は保険適応での肝移植が受けられます。
       徳島大学では、世界的にも手術成績が悪いとされている「血液型不適合移植」も実施し、全例生存され良い結果を示しています。

      内科的治療

        (1)局所穿刺療法

        局所穿刺療法では主にラジオ波(RFA)やマイクロ波(MWA)が使用されています。
        治療アルゴリズムにもあるように、通常は3cm以下の小型肝がんで個数が3個以内の場合が適応となります。

        (2)肝動脈(化学)塞栓療法

        肝動脈塞栓療法は下肢のつけねの大腿動脈からカテーテルを挿入し、肝臓に抗がん剤を注入し、腫瘍に入る動脈を詰める方法です。肝動注用のリザーバーを留置し、抗がん剤を投与する方法で外来に通院しながらの投与も可能です。

        (3)薬物療法

         肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法が行えない進行性の肝細胞がんで、全身状態と肝臓の機能がともに良好な場合に行われます。
        アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法
        デュルバルマブ+トレメリムマブ併用療法
        ニボルマブ+イピリムマブ併用療法
         がん免疫療法と呼ばれる比較的新しい種類の抗がん剤です。「細胞をかたっぱしから攻撃する」タイプの抗がん剤と異なり、「体内の免疫力を強めることで、がんに打ち勝つ」タイプの抗がん剤です。特殊な副作用に注意しながら、3~4週に1回、点滴投与します。

        レンバチニブ療法
         レンバチニブは腫瘍の増殖や腫瘍の血管新生に関与する複数のタンパク質のリン酸化酵素を阻害することにより、がん細胞が増殖するのを抑える内服薬です。1日1回の服薬を継続します。

        ソラフェニブ療法
         ソラフェニブは、腫瘍の増殖に関与する複数のタンパク質のリン酸化酵素を阻害することにより、がん細胞が増殖するのを抑える内服薬です。1日2回の服薬を継続します。

        レゴラフェニブ療法
         レゴラフェニブは、ソラフェニブが効かなくなった肝細胞がんに対する二次治療として、2017年に保険承認された内服薬による治療です。1日1回の服薬を3週間継続した後、1週休むというサイクルで継続します。

        カボザンチニブ療法
         カボザンチニブは、肝細胞がんの増殖にかかわる分子を阻害し、がんの増殖を抑える薬です。化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞がん患者に対する治療薬として2020年11月に保険承認された内服薬による治療です。1日1回の服薬を継続します。