小児科

小児科

日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
『妊孕性温存に関する診療ガイドライン』から抜粋

総説

小児がんの治療成績はここ数十年で飛躍的に改善した。しかし,妊孕性の低下をはじめとする長期合併症は,治癒し得た症例において大きな問題となっている。

1.疫学

小児がんは,小児の死亡原因として「不慮の事故」に次いで頻度の高い事象であり,小児期の病死順位としては第1位を示す疾患である。本邦の年間発生数は,2,000~2,500人,発生率にして15歳未満人口1万人あたり1~1.5人である。全小児がんにおける各疾患の頻度は,白血病が約40%,脳腫瘍が約20%,骨軟部肉腫が約10%,神経芽腫が約8~10%,腎芽腫,肝芽腫が約5%を占める。リンパ性白血病は幼児期,胎児性腫瘍は乳幼児期に多いが,肉腫では思春期に好発するものが多い。男女比は1.1:1で,やや男児に多い。

2.病態

上皮性がんの多い成人がんと異なり,小児がんは,白血病,脳腫瘍,胎児性腫瘍や肉腫がほとんどである。また,小児がんは,臓器に限定されず,全身のあらゆる部位から発生し,進行が早く,初診時に既に遠隔転移や全身播種している例も稀ではない。腫瘤性病変を生検あるいは摘出する前に,全身的な検索と病期,リスク分類を行うことが,その後の治療方針の決定のために必要である。

3.治療

小児がんは,化学療法,放射線治療に感受性のある腫瘍が多く,これらと外科療法をタイミングよく組み合わせ,間断なく,集学的治療を行う。一方で,アルキル化薬をはじめとする化学療法剤の使用や,骨盤,性腺が照射野となる放射線治療は,不妊の原因となりうる。このような治療を行う場合,診断から治療開始までの短い時間で妊孕性低下のリスクを評価し,生殖医療を専門とする医師,看護師,臨床心理士,ソーシャルワーカー等の多職種と連携して,チームで対応する必要がある。小児がん治療医が適切に対応できることを目的として,どのような治療を受ける患者が妊孕性温存療法の適応となるか,妊孕性温存療法にはどのような方法があるか,妊孕性温存療法を行うために小児がん治療を調整することは可能か,小児がん患者の治療後の妊娠・分娩について,どのような情報を提供すべきかについて,各CQ で詳述する。小児がん領域においては,本人,家族は診断後の大きな心理的負担の中,短期間の間に妊孕性温存療法に関する意思決定を余儀なくされる。こうした状況に配慮して,医師,看護師,がん相談員を含む多職種が連携して,対応にあたる必要がある。

4.予後

小児がん全体の治療成績はここ数十年で飛躍的に進歩した。小児のリンパ性白血病の予後は90%近くになり著しい改善をみている。
小児がん患者の生存率の向上に伴い,成人する小児がん経験者も増加し,治療による晩期の影響が大きな問題となってきた。小児がん治療においては,治療反応性や再発の有無など転帰のみならず,小児期の成長障害や成人後の妊孕性の低下を含む内分泌学的経過,二次がん発症のリスクなどについて,長期的なフォローアップが必要である。そして,その結果を現在の患児および家族へのケアと将来の治療改善のために,フィードバックすることが重要である。

4.予後

5.小児特有の倫理的配慮

小児患者における妊孕性温存療法の実施に際して,対象が小児患者であるため,小児特有の倫理的配慮必要となる。日本においては,実地臨床にける小児患者に対するインフォームドコンセント,アセントの指針は現段階では存在しないため,米国小児科学会の指針,小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス,人を対象とした医学系研究に関する倫理指針の記載をもとに,小児特有の倫理的配慮が必要である。
アセントにおいては,単に小児患者から合意を得ることが目的ではなく,年齢に応じた説明を受け,それを理解した上で,小児患者自身の考えで合意することが重要である。また,十分な理解能力を有する思春期以降の小児患者には,親からの同意に加えて,本人からの同意を得ることを推奨している。