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大腸がん

大腸癌・大腸腫瘍

1.大腸の機能と癌発生

大腸は消化吸収が行われた食物の最終処理をする消化管で、主に水分を吸収して排泄に都合のよい状況をつくり出します。
大腸は約1.5mの長さがあり、口側から盲腸、結腸、直腸、肛門の順で構成されます。
大腸がんは比較的治りやすいけれども患者数が多く、適切な診断、治療が重要であり、男性、女性ともにほぼ罹患頻度は同じです。
また年齢分布では60歳代後半にピークがあります。大腸がんの発生には遺伝的因子より環境的因子の比重が大きいと考えられています。
食生活の欧米化に伴い、大腸がんは近年著しく増加しています。現在、死亡数では肺癌、胃癌に次いで第3位であり、数年後には胃癌を抜くといわれています。
しかし遺伝的素因もその発症には関与しており、大腸がんにかかりやすい高危険群として家族の中に大腸がんにかかった人がいることがあげられています。
その他にも
1)過去に大腸ポリープができたことがある。
2)10年以上潰瘍性大腸炎にかかっている。
3)痔瘻が何年も続いている。
4)過去に骨盤腔に放射線をあてたことがある。
などが高危険群としてあげられています。
特にこのような方は定期的な大腸がん検診が必要とされています。

2.症状および診断

大腸がん研究会によって大腸癌治療ガイドラインが2004年に作成され、定期的に改訂されています。本ガイドラインは大腸がんの診療に従事する医師が大腸がんの標準的な治療方針を理解し、それを受け入れやすくするために作成されており、その目的は

  1. 大腸がんの標準的な治療方針を示すこと
  2. 大腸がん治療の施設間格差をなくすこと
  3. 過剰診療・治療,過小診療・治療をなくすこと
  4. 一般に公開し,医療者と患者の相互理解を深めること

その結果、日本全国の大腸がんに対する治療水準の底上げ、治療成績の向上、人的・経済的負担の軽減、患者利益の増大につながることを期待しています。

3.大腸がんの進行度

進行度については日本では大腸がん取扱い規約に従って分類されます。
0, I, II, IIIa, IIIb, IV期の順で進行した状況となります。
0期はごく早期のがん(粘膜内がん)です。
I期はリンパ節に転移がなく腸管壁への浸潤も固有筋層までにとどまる状態です。
II期はリンパ節に転移がないが腸管壁への浸潤が深い(固有筋層を貫く)状態です。
さらにリンパ節転移がある場合III期となりますが、腸管のがんに近いリンパ節に転移していて3個以内の場合IIIa期で、やや距離的に離れたリンパ節に転移している場合や転移リンパ節個数が4個以上の場合はIIIb期となり進行していることになります。
さらに肝や肺などの血行性転移、腹膜播種がある場合や遠隔のリンパ節に転移している場合はIV期(残念ながら初回に大腸がんと診断されたとき約20%の方がこの進行度となっています)となります。

4.治療

治療法には内視鏡的治療、外科治療、放射線治療、化学療法があります。
可能であれば内視鏡的治療または外科治療が第一選択となります。

A)0-III期

早期がんの定義はがんの深達度(深さ)が粘膜固有層、粘膜下層にとどまるものとされています。前述の進行度(stage)では0期全て、I期の一部(固有筋層浸潤がんを除く)となります。早期がんの治療法もそのがんの深達度によりさらに細分類されます。
MおよびSMがんの一部はガイドラインに基づきますと、可能であれば内視鏡的治療が第一選択となります。ただし、内視鏡的に切除が不可能な場合は外科的な治療となります。

a)粘膜内がん(mがん)

粘膜内がん(mがん)ではないかと診断されたら内視鏡的ポリペクトミー(摘除術)、粘膜切除あるいは肛門に近い場合は経肛門的局所切除をまず試みます。術前通りの深さであり、取り残しがない時にはこれで十分な治療と考えられ追加の治療は必要ありません。

b)粘膜下層浸潤がん(smがん)

早期がんでも一定以上の深さ(専門的には粘膜筋板を越えて粘膜下層に浸潤している)に達しているものを粘膜下層浸潤がん(smがん)としています。smがんはリンパ節転移の可能性がでてきて、smがん全体の約10%にリンパ節転移を認めます。sm軽度浸潤がんではリンパ節転移の可能性がないため、内視鏡的治療が選択され、sm高度浸潤がんではリンパ節転移の可能性があるために外科的治療が選択されます。また、内視鏡的治療を行った場合でも、切除したがんを顕微鏡(病理)検査して、いくつかの所見を認めた場合は外科的治療の追加を考慮する必要があります。smがん全体の5年生存率は95%です。

開腹手術か腹腔鏡下手術

外科的治療は従来の開腹による手術と腹腔鏡を用いた小さい傷の手術に大別されます。最近では腹腔鏡下手術も広く知られるようになって来ました。腹腔鏡下手術は従来のおなかを大きく切って手術をするのではなく、腹腔鏡(カメラ)を使ってする手術です。傷が小さい、術後の痛みや体にかかる負担が少ない、回復が早い、などの長所があります。開腹手術の既往の有無、腸閉塞の有無、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の程度にもよりますが、大腸がんのすべてに対して行うことが可能です。最近では、技術の進歩により進行大腸がんにも安全に腹腔鏡下手術を行うことが可能となりつつあります。ただし、腹腔鏡下手術は普及しつつあるといっても、開腹手術とまったく異なる知識や技術が必要です。また、腹腔鏡下手術をマスターするには多くの経験を要することもわかっています。トラブルの多くは腹腔鏡下手術への不慣れや知識不足から発生することも知られています。
私たちのグループはすでに500例以上の腹腔鏡下大腸手術の経験を持ち、優れた成績を残しています。また腹腔鏡下手術の講習会の依頼を受け、全国レベルでの腹腔鏡下手術の手術成績評価に加わるなど高い技術レベルが評価されています。
大腸がんと診断され手術が必要となった場合、患者さんは腹腔鏡下手術か開腹手術かを迷うと思います。私たちはそれぞれの長所、短所を説明し、さらに私たちの手術成績をお示しして、患者さんに治療法を選んでもらっています。

B)IV期

IV期に対しては外科治療が予後の改善に最も効果があると考えられているため、大腸癌治療ガイドラインでも原発巣の摘出、そして可能な限り転移巣の摘出ができないか検討します。この場合、患者さんの体力そして摘出した後の生命を維持する臓器の残存機能が問題であり、さらに現在ではどこまで普通の生活に戻れるかもQOLとして重要な課題です。IV期全体の5年生存率は約12%ですが、転移が肝臓だけにとどまり転移を極力摘出できて肉眼的には取り残しがないとされた場合では5年生存率は約30%です。切除しなかった場合の5年生存率は約1%であるわけですから、それに比べれば高い数値と言えますが外科的治療の限界でもあります。そこで最近では外科治療に加えて最新の化学療法を併用することで治療効果を高めるようにしています(切除不能である肝臓転移を化学療法で小さくして外科治療を行うなど)。

術前化学放射線療法(CRT)

最近は、下部直腸(Rb)や肛門の進行がんの場合は即座に手術をせずに化学放射線療法をまず勧めています。ガイドラインどおりの手術による治療では自律神経の温存や、肛門機能を温存できる可能性が低い場合があり、このような場合には少しでも腫瘍を小さくして、手術侵襲の範囲を縮小する方法として化学放射線療法を手術前に行うことがあります。
自律神経を温存することによって、術後の排尿機能・性機能を保ちます。さらに、下部の(肛門に近い)直腸癌でも、術前に化学放射線療法を行うことにより腫瘍を縮小させて、出来る限り肛門括約筋機能を温存し、人工肛門(ストーマ)を造設せずにすむ様に努力しています。
また、この術前化学放射線療法に腹腔鏡手術を加えることで、より体に優しい治療が可能となります。退院後も、大腸専門外来を設けて術後、人工肛門(ストーマ)の経過観察など、さまざまなケアーをしています。

化学療法

抗がん剤の投与方法としては
1)経口投与(口から飲む)
2)静脈注射(点滴で行う)
3)動脈注射(動脈内にチューブを留置してそれを通して抗がん剤を注入する)
の3種類があります。

日本では1)の経口による投与方法が欧米に比べて頻度が多いのが特徴です。
経口の薬としては5-FU系のもので、テガフールウラシル(UFT)、ゼローダ、ティーエスワン (TS-1)等があります。UFTは経口の1-LV錠剤と組み合わせて投与することにより、治療効果を高めることができます。静脈注射するものとしては 5-FUをはじめOxaliplatin、CPT-11、l-LVなどは全て静脈から投与できます。動脈から注入する薬として5-FUがあります。これは肝臓に転移している場合など肝臓へ流れる動脈に直接チューブをいれてそこから注入する方法で、肝動注といいます。
大腸がんに対する抗がん剤治療には手術後に再発予防のために行う術後補助化学療法と、切除不能大腸がんに対する化学療法とに分けられます。
術後補助化学療法は予防的治療のために原則は6ヶ月で終了です。経口の抗がん剤やFOLFOXなどの静脈注射による化学療法が行われます。
切除不能大腸がんに対する化学療法では、治療効果が認められる間は、基本的には継続して化学療法を行います。治療効果がなくなれば別の薬に変えて治療を継続します。

現在主に使用されている抗がん剤は3種類あります。

1.5-FU(ファイブエフユー)

この抗がん剤は古くから使用されているものです。
5-FUの代謝産物が細胞の核内のチミジル酸合成酵素によるDNA合成経路の阻害をする。
またRNAを障害し抗がん作用を発揮するともいわれる。
5- FUの作用を増強するものとして1-LV(ロイコボリン)がありこれは5-FUの抗がん作用であるチミジル酸合成酵素阻害を増強する。

2. CPT-11(塩酸イリノテカン)

抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成されたものであり生体内で活性物質のSN38に変換されI型トポイソメラーゼを阻害することによりDNA合成を阻害して抗がん作用を発揮する。

3. オキサリプラチン

新しい白金製剤で、これまで胃がんなどで使用 されていたシスプラチンも同様の白金製剤ですが、この薬に比べて腎臓の負担が少ない薬です。
海外では5FU/1-LVと併用して用いられることが多い薬剤 です。
日本では2005年に使用認可が下りました。
日本でも使われる頻度が高くなった薬剤です。

2010年の大腸癌治療ガイドラインに示されている切除不能・再発大腸がんに対する化学療法は図のようになります。
多くの抗がん剤が使用されるようになっており、専門家とよく相談してから治療することが重要です。
また、治療成績をより向上するために抗がん剤に加えて、分子標的療法という治療を組み合わせる場合も多くなっています。
これには、がんの微小な血管形成を阻害するベバシズマブという薬や、がんの成長を止めるセツキシマブ、パニツムマブという薬が含まれます。
セツキシマブ、パニツムマブではKras遺伝子に変異があると治療効果が悪いことがわかっています。
また、CPT-11ではUGT1A1遺伝子の変異によって副作用の発現率に大きな差があります。
これらのKras遺伝子、UGT1A1遺伝子の検査を行い、個々の患者さんに合った抗がん剤の個別化治療を行っています。
さらに、抗がん剤の副作用を減らしながらより高い治療効果を得るため、漢方薬の積極的な投与や、抗がん剤の投与方法に様々な工夫を加えています。

現在主に使用されている分子標的薬は3種類あります。

1.ベバシズマブ
2007年4月に承認された世界初の血管新生阻害薬で、他の抗がん剤と併用することでよい治療成績が得られています。
がんが増殖するに伴って、がん自身に栄養を供給するために血液を送りこむ血管を新しく作ります(血管新生)。
アバスチンは、この血管新生を促すためにがん細胞が分泌するVEGFというタンパク質に結合して、血管の新生を抑え、栄養を行き渡らせないようにして、増殖のスピードを低下させるはたらきがあります。

2.セツキシマブ
2008年7月に製造販売承認された新しい抗がん剤で、大腸がんを対象としたモノクローナル抗体です。
モノクローナルとは、「特定の物質だけに結合する抗体を選び、人口に作り上げたもの」という意味合いですが、体内の特定の分子を狙い撃ちにして、その機能を抑えるはたらきをするため、分子標的薬と呼ばれています。
セツキシマブは、がん細胞が増殖するために必要なシグナルを受け取るEGFR(上皮成長因子受容体)というタンパク質を標的としています。
セツキシマブがEGFRと結合すると、がん細胞の表面に顔を出してアンテナの役割を果たしているEGFRは働けなくなり、その結果、シグナル伝達が遮断され、がん細胞は増殖できなくなります。

3.パニツムマブ
ベバシズマブやセツキシマブと同じく、進行・再発の大腸がんを対象とした分子標的薬です。
日本では2010年に承認された新しい薬です。
がん細胞の表面に出ているEGF(上皮細胞増殖因子)の受容体に自ら結合することで、がんの増殖を抑えるはたらきをします。
パニツムマブは、セツキシマブと違い、完全ヒト化抗体であることから、注射投与中または投与後に現れるアレルギーによるトラブルが起こりにくいというメリットがあるとされています。
しかし、セツキシマブでもこのアレルギーのトラブルはまれにしか起こらないと報告されているので、完全ヒト化抗体の薬が登場しても、大きな変化にはならない等意見もあります。

再発大腸がん

再発大腸がんでも切除可能であれば切除が治療の第1選択となります。
切除不能例でも分子標的薬を含む化学療法、局所動注療法や放射線療法を積極的に行い良好な成績を上げています。
特に大腸がん肝転移に対しては肝切除を積極的に施行しています。
大腸がんは肝転移があっても根治し得る可能性のある疾患です。
切除不能の肝転移でも、化学療法により縮小化を図り、改めて切除することによって良好な成績を上げています。

   

大腸癌研究会HP:http://www.jsccr.jp/
徳島大学大学院 医歯薬学研究部 消化器・移植外科学HP:http://tokugeka.com/surg1/

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