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がん治療をサポートする口腔ケア

はじめに

がんは、昭和56年からわが国の死亡原因の第1位となり、国民の生命および健康にとって重大な問題となっています。
一生の間にがんに罹患するリスクは、男性:54%、女性:41%と、日本人の2人に1人ががんになる状況です(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 平成15年調査)。

徳島県のがん罹患率(1年間に人口10万人あたり何人ががんと診断されるか)は、男性2,563人、女性1,991人となっています(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター 2008年調査)。
徳島県の人口は約77.6万人ですので、1年間に男性:19,889人、女性15,450人が新たにがんと診断されていることになります。

がん治療に伴う口腔の問題点

図1 がん治療に伴う口腔の問題点

がん治療には、手術、化学療法、放射線療法、緩和治療などがあります。
それぞれのがん治療に伴う口腔の問題点を図1に示します。

がん治療に伴う急性期の口腔内合併症で最も頻度が高いものは、口内炎(口腔粘膜炎)です(写真1-3)。

  • 写真1 抗がん剤による直接的口内炎

  • 写真2 抗がん剤による直接的口内炎

  • 写真3 抗がん剤による直接的口内炎

図2 口内炎の発症の割合

頭頸部への化学療法や放射線療法、造血幹細胞移植や大量化学療法は、特に口内炎が強くでますが、通常の抗がん剤治療を受けた患者さんの約40%に口内炎が発症するといわれています(図2)。
このうち、約半数は口内炎がひどく、がん治療の中断や投与量の変更を余儀なくされます。

写真4 抗がん剤による口内炎 ※

抗がん剤や口腔がんの放射線治療が原因の直接的な口内炎は、口腔内が衛生的な人でも起こりますが、口腔内が衛生的でない人は、この直接的な口内炎に加えて、局所感染性(2次性)口内炎がおこります(写真4)。

歯垢(デンタルプラーク)1mg中(耳かき1杯分)には細菌が1000億個も存在しています。
歯垢が石灰化してものが歯石です。

抗がん剤などで体の免疫力が低下した場合に、歯垢や歯石が付着していたり、
状態のよくない歯がある場合、細菌感染がおこり、口内炎が悪化します。

※ 抗がん剤による直接的口内炎の他に口腔内の不衛生により局所感染性(2次性)口内炎も生じています。
  歯垢(デンタルプラーク)1mg中(耳かき1杯分)には、1細菌が1000億個もm存在しています。

全身麻酔の手術を行う場合は、著しい動揺歯などがあれば、挿管チューブ挿入時に脱落し、食道や気管に迷入する恐れがあります。特に気管に迷入した場合は、気管支鏡を用いて除去しなければなりません。
また、口腔内が不衛生であると、挿管チューブとともに気管内に歯垢(デンタルプラーク)を押し入れることになりますので、人工呼吸器関連肺炎(VAP)や誤嚥性肺炎などの術後合併症のリスクが高くなります。

大きな手術のあとは、しばらく人工呼吸器管理を行ったり、鼻から胃に管を通して栄養剤を入れる経管栄養を行うことがあります。
口から食事をしないと口腔機能は低下し、乾燥するとともに口腔細菌数は通常の約7倍に増えるといわれています(写真5,6)。

  • 写真5 ICUでの呼吸器管理

    大きな手術のあとは、しばらく人工呼吸器管理を行うことがあります。
    意識はなく自分で歯磨きはできません。挿管チューブが入り、口腔内は乾燥します。口腔ケアを行わないと、口腔細菌数はすぐに増加します。

  • 写真6 手術から数日後の口腔内状態

    酸素マスクをつけていると、口腔内は乾燥し口腔細菌数は通常の約7倍に増加するといわれています。

がん治療に伴う後発性の口腔内合併症もあります。頭頸部への放射線療法後、放射線性骨壊死が生じたり、唾液腺障害による口腔乾燥症や味覚障害が生じることがあります。
また、がんの骨転移に対してビスホスホネート系薬剤やデノスマブを使用された場合、抜歯などの処置を行ったあとに顎骨壊死や顎骨骨髄炎がおこることがあります。
これらは、がんを克服しても、摂食・嚥下機能を低下させるので、食事を食べる楽しみを減らすことになります(写真7-10)。

  • 写真7 ビスホスホネート関連顎骨壊死

    下顎の骨が壊死し、むきだしになっています。
    (獨協医科大学口腔外科学講座:川又 均教授資料提供)

  • 写真8 ビスホスホネート関連顎骨壊死

    右上顎の骨が壊死し、むきだしになっています。
    がんの骨転移のためビスホスホネート系薬剤やデノスマブを使用後に抜歯などを行うと、顎骨壊死や顎骨骨髄炎が生じることがあります。がんの治療前に悪い歯の治療を行っていれば、ここまでひどくならなかったと思われます。

  • 写真9 ビスホスホネート関連下顎骨骨髄炎

    下顎骨骨髄炎により右下顎の皮膚が腫れ、ろう孔(膿の出口)をつくっています。

  • 写真10 放射線性下顎骨骨髄炎

    顎下腺がんのため重粒子線治療を受けられました。がんは治りましたが、下顎骨骨髄炎を発症し皮膚に大きな穴があいています。食事をすると、水分が漏れ出します。

がん治療を円滑に行い、生活の質を保つために

平成24年4月より歯科の健康保険に「周術期口腔機能管理」という項目が新設されました。
周術期とは、病気が診断されてから、入院、麻酔、治療、回復といった一連の期間を指します。周術期口腔機能管理は、がん患者さんが治療を受ける前後に、歯科医師や歯科衛生士が口腔内の感染源を除去し、口腔衛生をよくすることで、口内炎の程度を最小限におさえ、誤嚥性肺炎や人工呼吸器関連肺炎などの合併症を予防し、生活の質を保ちながらがん治療を円滑にすすめるためにつくられました。
がん治療前後の歯科受診(口腔内診査、X線検査、歯科治療、口腔ケア)が、歯の症状のない患者さんでも健康保険で行えます。

周術期口腔機能管理の流れ

徳島大学病院は、四国で唯一、医科診療部門と歯科診療部門を併せもっています。
その特性を活かし、周術期口腔機能管理は歯科診療部門の「口腔管理センター」が窓口となり、歯科医師および歯科衛生士がチームとして診療にあたっています。
また、徳島県歯科医師会と連携し、入院までの大学病院への通院が困難な患者さんやかかりつけ歯科がある患者さんは、地元歯科に紹介しています。

写真11
入院前、外来での歯石除去の様子

写真12 ICUでの口腔ケアの様子

徳島大学病院での周術期口腔機能管理(口腔ケア)の流れを示します。

1.がん治療を受けられることが決まったら、担当の先生に口腔ケア依頼せんを書いてもらいます。

2.入院説明を受けられる際に、入院事前説明室にて周術期口腔ケア外来の予約をとります。

3.入院前までに口腔管理センターを受診し、口腔内診査、X線検査などの口腔内検査を受け、
    歯石除去、口腔衛生指導などを受けていただきます(写真11)。
    動揺歯や感染源となる歯の治療が必要な場合は、専門の科に紹介します。
    遠方の患者さんやかかりつけ歯科がある患者さんは、地元歯科に紹介します。

4.入院中は各病棟の担当者が口腔ケアを行います(写真12)。

5.退院後は、地元歯科で定期的な歯科治療を受けて頂きます。

最後に

口腔ケアは、がん治療の生存率に直接影響を与えることはありませんが、がん治療に伴う口内炎の症状緩和、感染回避、治療完遂をサポートし、QOLを向上させる大切ながん支持療法です。がん治療を受けられる方は、ぜひ歯科を受診してください。

お問い合わせ先

徳島大学病院:徳島大学病院 口腔管理センター 088-633-7369
徳島県歯科医師会 088-631-3977

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